会長挨拶
一般社団法人日本ペインクリニック学会第59回学術集会
日本ペインクリニック学会
第59回学術集会会長
NTT東日本関東病院
ペインクリニック科
安部 洋一郎
2025年日本ペインクリニック学会学術集会の会長を務めさせていただきますNTT東日本関東病院ペインクリニック科の安部洋一郎です。コロナが第5類相当となり、ほぼ、従来どおりの開催に戻ることに感謝したいと思います。人は還暦前には今までの59年間の歩みを振り返ると思います。今までの59年を振り返り、第2ステージを新たに始めるという気持ちを込め、タイトルは「未来に繋ぐ知識、知恵、技術」とさせていただきました。
学会会場は2025年4月開業予定の TAKANAWA GATEWAY Convention Center といたしました。第1回目の学会開催となります。東京・高輪は400年前から東海道として京都へと続く道すがらにあり、150年前には近代日本幕開けの鉄道発祥の地です。ペインクリニック第2章開始直前にふさわしい地ではないでしょうか。
タイトル「未来に繋ぐ知識、知恵、技術」の各項目のトピック紹介
知識;
痛みの診断のために痛覚変調性疼痛のより深い理解は欠かせません。学会員と情報共有や活発な意見交換の場をつくります。
末梢神経の痛み経路の確認;慢性疼痛の際、中枢神経だけでなく末梢神経でもあらたな痛み経路の報告が多くなっています。私個人としては三叉神経痛や根性坐骨神経痛のように疼痛原因部位より末梢側に痛みが放散するものは、逆行性伝導による末梢側での複数の知覚神経や交感神経との相互作用が必ずあると思っております。画像所見と臨床所見が異なること、無痛期があることなど興味が尽きません。現在の知識の整理や今後の研究に有益な情報を提供したいと思います。
近年ポリファーマシーが問題になっており、各薬剤の使用法だけでなく多剤併用時の注意点を使用者側が理解する必要があります。シンポジウムで理解を深めていただきたいと思います。
疼痛リハビリテーション、臨床心理士、他科診療科と共同で慢性疼痛治療をおこなうポイントを議論する場を作ります。
知恵;
診断機器が進歩した昨今でも、加齢変化でターゲットになる目標点が視認できなかったり、出血などで治療を進めるか撤退するかの判断に迫られる場面がままあります。これに対する対処は今までの諸先輩の経験則が大いに参考になります。参考となる「見識、言い伝え」をこの1年集積して学会会場でお披露目したいと思います。エビデンスとは異なるものもありますが実臨床で役立つ知識を提供します。
技術;
神経ブロックをはじめとしたインターベンション治療各種は手技ですから当然得意、不得意、上手、下手といった技術格差が生じます。今回は手技について突っ込んだ議論を行いたいと思います。同一ブロックに対しアプローチ法の議論やベテラン術者の成功のコツなどの議論を行いたいと思います。
招待講演には自動改札機、遠隔医療など日常生活に必須な機器を繋ぐ組込み型OS「トロン」を開発した元東大教授坂村健先生や、室町時代から400年続く日本芸術の凝縮ともいえる観世流能楽師浅井文義氏の講話のほか、北海道大学分子神経免疫学村上正晃 教授から「鍼灸を科学する」末梢神経インターベンション治療などのご講演を予定しております。
現地参加できない方のためにWEB講演も計画いたしますが、現地は100年先の心豊かな街づくりを目指すイノベーションの地として計画された地域でありますので是非実際においでいただきたいと思っております。
懇親会では源頼朝が創始した品川神社ゆかり「獅子舞」をはじめとした楽しい企画を練っております。
時代を超えた出会い、繋いでいくことの重要さをお持ち帰りいただき明日の診療に役立てて頂きたいと存じます。
現地でお会いできること、心より願っております。
何卒、宜しくお願い致します。
一般社団法人日本ペインクリニック学会
第59回学術集会会長
NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
安部 洋一郎