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代表理事挨拶

日本ペインクリニック学会代表理事
洛和会丸太町病院

細川 豊史

私、洛和会丸太町病院の細川豊史は、2017年7月23日より、日本ペインクリニック学会の代表理事を務めさせて頂いております。

日本ペインクリニック学会も1969年の創設以来すでに、50年有余の歴史を持つようになりました。神経ブロックを中心に、先人である多くの麻酔科医が築き上げてきた本邦のペインクリニックも、最近では、多様な分野での医療の変遷と共に、様々な種類の鎮痛薬や鎮痛法の導入により、様変わりを余儀なくされてきつつあります。

神経ブロックを中心としたインターベンショナル治療に加え、薬物療法、心理的アプローチ、リハビリテーション、集学的治療などを加味した痛み治療が、これから必要とされてきています。

薬物療法に関しては、この10年ほどの間に、多くの鎮痛薬が新規上市、又は適応拡大となり、それに伴い、本邦でも、整形外科、神経内科、脳外科を始めとした多くの科の医師が痛みの治療に大いに興味を持ち、且つ参加、参画されるようになってまいりました。クリントン元合衆国大統領の主唱した21世紀初頭の“痛みからの解放のOne Decade”は、基礎研究分野では大きな成果が上げられましたが、臨床の現場では、痛みと鎮痛薬に無知で無責任な多くの医療者のために、オピオイド鎮痛薬の適応とその怖さを知ることもなく、安易に無邪気に大量のオピオイド鎮痛薬が多くの疼痛患者に処方されてしまいました。2015年の米当局の調査の結果は、米国民の36%にあたる9,750万人が、その多くはオピオイド鎮痛薬である医療用鎮痛薬を使用し、このうち1,250万人が不正使用を経験し、203万人が依存症に陥り、死亡者は年間3万人を超えるという、驚くべ内容で悲惨・恐怖とも言えるものでした。米国では、この現状を憂慮し、これを”Opioid Crisis”または“Opioid Disaster”と呼び、現在、政府を上げてその対策に邁進している状態です。幸い、当学会では、2010年の薬事法改正に伴って慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用が認可されたことを受け、2012年7月には、ベストセラーとなったオピオイド鎮痛薬の利点と注意点に留意した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン(和・英)」を上梓させ、安全なオピオイド鎮痛薬の本邦での使用の普及に貢献してまいりました。このことと、国の厳格な法的規制のおかげで、本邦では、米欧に比し、安全なオピオイド鎮痛薬の使用が行われてきています。痛み治療に従事する多くの良識あるペインクリニシャンを始めとする多くの医師は、素直にオピオイド鎮痛薬による米・欧と同様な弊害が本邦で生じることを懸念すると共に、他の新しい機序の鎮痛薬の使用についても、その副作用や合併症の予防も含めた正しい使用法を行い、周知することに、日々、心を砕いているのが現状です。これには、2011年に上梓され、やはりベストセラーとなった「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」も大きな役割を果たしてくれました。

しかし、今もなお、安易なオピオイド鎮痛薬の処方や不適当、時には不要な多剤の鎮痛薬治療を行う医師などが後を絶たないのも事実です。

痛みを俯瞰して捉え得る最も近い位置にいるのが、痛みの原因診断と痛み治療に習熟したペインクリニシャンであることは事実です。その多くは麻酔科医出身です。幸い、新専門医制度の中で、ペインクリニックが、麻酔科医の専門領域の一つとして認められ、麻酔科医の充足と共に、多くの若手麻酔科医がペインクリニック分野の基礎研究、臨床に今後参画されてくるであろうことを期待する今日この頃です。

これからも、皆様の、痛み治療、研究への御参加、御助言、御協力を宜しくお願い致します。

2018年8月

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