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Key Point

抗うつ薬、抗痙攣薬

1. 抗うつ薬

抗うつ薬は、脳内の神経伝達系に作用してうつ病・うつ状態を改善させる効果をもつ薬剤の総称です。その化学構造や作用機序の違いによって、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors: SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin Noradrenalin Reuptake Inhibitor: SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant: NaSSA)に分類されます(図)。神経障害性疼痛をはじめとする慢性疼痛には三環系抗うつ薬とSNRIの有効性が証明されており、現在広く臨床使用されています。その他の抗うつ薬の中にも鎮痛作用が報告されているものもありますが、大規模な臨床研究がおこなわれていないことから、現時点での推奨度は高くはありません。抗うつ薬の鎮痛効果は、抗うつ作用より早く、かつ、低用量で出現すると考えられています。

作用機序:
脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンおよびセロトニンを増加させることにより、下行性疼痛抑制系を賦活することで鎮痛作用を発揮すると考えられています。SSRIがセロトニン濃度を選択的に高めるのに対し、SNRIはセロトニン濃度とノルアドレナリン濃度の両方を高めます。その他、NMDA受容体拮抗作用、ナトリウムチャネル遮断作用、カルシウムチャネル遮断作用などもあり、その作用は多岐に及んでいます。

鎮痛補助薬としての適応:
神経障害性疼痛、慢性腰痛、線維筋痛症、そのほか中枢性下行性抑制系の鎮痛作用を期待する症例に用いられます。

副作用:
三環系抗うつ薬の代表的な副作用は抗コリン作用による口渇、便秘、排尿障害、眼圧上昇および抗ヒスタミン作用による眠気、ふらつきが挙げられます。これらの副作用は特に高齢者で注意が必要です。また、洞性頻脈、脚ブロック、ST及びT波の変化、起立性低血圧などの心機能障害が起ることがあるので、心臓疾患を有する患者には注意が必要です。SNRIの副作用は、三環系抗うつ薬と比較して少ないものの、吐き気、口渇、不眠性機能障害があります。また、SNRI投与中に自殺行動のリスクが高くなる可能性が報告されています。

2. 抗痙攣薬

プレガバリン、ガバペンチン、カルバマゼピン、ラモトリギン等に代表される抗てんかん薬は,神経細胞の異常な興奮を抑える効果があり、抗痙攣作用に加えて痛みを和らげる効果が期待されます。特に、神経障害性痛に対して広く使用されていますが、副作用の頻度も高く注意が必要です。

作用機序:
2-1. Ca2+チャネルα2δリガンド(プレガバリン、ガバペンチン)

プレガバリンとガバペンチンは、γ-アミノ酪酸 (GABA)と類似の構造をもちますが、GABA受容体に対する作用はありません。そのかわり、神経における電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニットに結合します。その結果、神経内へのCa2+の流入を抑制することで痛みの伝達物質の放出を低下させます(図)。このことにより痛み信号の伝導を抑制し鎮痛効果を発揮します。

2-2.Na+チャネル阻害作用(カルバマゼピン、ラモトリギン)
神経細胞膜のNa+チャネルに作用して神経の異常興奮を抑えることにより,痛み信号の伝導を抑制します。

2-3.GABA系賦活作用(バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム)
神経シナプスでGABAの作用を増強し、痛み信号伝達の抑制系を賦活します。

適応
プレガバリンは、神経障害性痛 (末梢性: 帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害など、中枢性: 脊髄損傷後疼痛など) に対して、鎮痛効果およびQOL改善効果が示されている。このことからプレガバリンは早くから神経障害障害性痛の第一選択薬とされています。また、三叉神経痛に対しては,カルバマゼピンが第一選択薬に位置付けられています。

副作用
頻度の高い副作用として、浮動性めまい、傾眠、ふらつきがあります。特に高齢者は副作用に伴う転倒に注意が必要です。副作用を軽減する方法として、一般的には、少量から開始し,効果と副作用を観察しながら徐々に増量する方法がとられます。その他、プレガバリンには浮腫、体重増加、視力異常が生じることがあります。また、カルバマゼピンでは稀に重篤な血液像異常,薬疹を来たすことがあります。


参考図書:
1)
一般社団法人日本ペインクリニック学会 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂版
2)
Bonica's Management of Pain、4th ed. LIPPINCOTT WILLIAMS & WILKINS、2010
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