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痛みとは?
 痛みとはどういうものなのか。痛みはだれでも知っていて、誰でも経験しているものですが、説明し難いものです。国際疼痛学会の定義では、「An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage(実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚や不快な情動体験)」と説明されています。確かに適切な医学的表現ですが、一般の人たちに伝えるには難しい表現です。

 私達にとって、痛みとはどんなものでしょうか。ごく単純に言えば、痛みは私たちにとって嫌なもの(感覚)ということになります。感覚として嫌なものですが、体の機能にとっても痛みは嫌なものです。例えば、痛みがあることで、私たちの体には血圧上昇、心拍数増加、血管収縮、頻呼吸、呼吸運動抑制、内分泌系ストレス反応などが起こってきます。血圧上昇や心拍数増加は循環系にとっては大きな負担であり、頻呼吸や呼吸運動抑制も呼吸系にとっても大きな悪影響もたらします。すなわち、痛みは生体機能にとっても嫌なものと言えます。また、私たちの日常生活の中で考えると、痛みがあれば、眠ることができなくなり、食欲はなくなり、行動の意欲もなくなり、心配や不安が襲ってきます。痛みは人が自分らしい生活をおくることを妨げるもの、すなわち嫌なものです。このように考えれば、痛みというのはあらゆる面で人にとって嫌なものと捕らえることができます。

 もちろん、痛みを伝える機能は、身体に迫ってくる危険を察知し、これを回避するという生体防御機構の一部であり、警報としての大切な役割を担っています。しかし、警告としての役割が必要ない状態になっても、痛みが残っていたり、長く続くこともあります。病気が不安なものや怖いものである原因の1つは痛みをもたらすからです。この警告の役割がなくなった痛みやもともとその役割を持たない痛みは生体にとって嫌なものでしかありません。人にとって嫌なものである痛みがたくさんの人々を苦しめているのが現状です。

 痛みがあることのもう1つの問題は、痛みがまた新しい痛みの原因を作り出し、さらに痛みを増強していくこと、より複雑な治り難い痛みを作り出してしまうことにあります。このような、痛み増幅機構については後の項で詳しく説明しています。

 痛みの性質と問題を考えてみると、痛みは我慢するものではないことがわかります。適切な痛みの治療を速やかに行うことがとても重要になります。このような痛みの治療に対応するのがペインクリニックであり、それを担う専門医がペインクリニシャンということになります。
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