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神経ブロックの効果
 神経ブロックは交感神経、知覚神経、運動神経を対象に、主として局所麻酔薬を用いてそれぞれの神経の刺激伝達を遮断することにより、それぞれの異なった効果が出ます。
1. 感覚神経の遮断(図1
 炎症は神経終末の感受性を高め(末梢性感作:peripheral sensitization)、さらに脊髄より中枢側での感受性の亢進(中枢性感作:central sensitization)を引き起こします。このような興奮の維持や長期化の細胞内機構が徐々に解明されるにつれ、中枢神経細胞への影響をより少なくすることの意義は増し、その目的のためには早期から末梢組織の興奮性を抑制することが重要であると考えられています。
 知覚神経ブロックは侵害受容器からの信号の入力を断つことで無痛状態を得ますが、このことは単に痛みを止めるだけにとどまらず、脊髄より中枢側での感受性亢進の予防にきわめて重要です。
 一方、三叉神経痛や癌疼痛などの疾患では、知覚神経を神経破壊薬でブロックすることにより、長期にわたって効果を持続させることも可能です。
2. 交感神経機能の遮断(図2
 大部分の血管は交感神経支配のみであり、交感神経ブロックによる血管拡張作用は血行障害の改善に極めて効果的です。局所の虚血状態が発症の一因と考えられる末梢性顔面神経麻痺や突発性難聴などの治療に応用が出来ます。また、交感神経機能の遮断による発汗抑制は多汗症の治療に応用できます。腹部内臓の交感神経叢である腹腔神経叢ブロックが、癌疼痛治療手段の一つとして広く実施されています。
3. 痛みの悪循環の遮断(図3
 病気や外傷など、生体が何らかの傷害を受けると、そこで発生した信号が末梢神経から脊髄を経由して脳で痛みを感じます。その際に、末梢の知覚神経からの信号が脊髄後角に達すると脊髄前角の交感神経と運動神経の興奮をもたらします。交感神経の興奮は血管を収縮し、発汗を亢進させます。運動神経の興奮は筋肉を収縮させます。その結果、傷害部位の血流は減少して虚血状態になり、筋肉は凝った状態になり、局所血流が悪化し、代謝産物蓄積、組織酸素欠乏の状態になります。発痛物質の生成・遊離へと進み、痛みは増強し、部位も拡大していくことになるわけです。これが痛みの悪循環で、このような現象を確実に断ち切るのに最も良い手段が神経ブロックです。知覚神経ブロックは、単に痛みを止めるだけではなく、悪循環を断ち切ることでもあり、交感神経ブロックも同様に痛みを軽減するのに極めて有効な手段となるわけです。これらの目的に対しては局所麻酔薬を使用した神経ブロックを繰り返し施行することで達成できます。
 痛みの悪循環に対する神経ブロックの効果を比喩にすると、痛みの悪循環の状態は高速で回転している車輪に例えられ、神経ブロックは局所麻酔薬が効いている約2時間の間にかかるブレーキと考えれば、単なる痛み止めの代わりとは異なることが容易に理解できるのではないでしょうか。
4. 運動神経の遮断(図4
 異常な筋運動に対しては、運動神経を適度にブロックして症状を和らげることが出来ます。顔面痙攣に対する顔面神経ブロックはその代表的ブロックです。
 以上、どの神経ブロックを選択するかはあくまでも病態を考慮した上で、神経支配領域と症状の程度、病状の期間、画像診断の結果などを考慮して選択することになります。
図1. 肋間神経ブロック
(知覚神経ブロック)
図2.交感神経ブロックである星状神経節ブロック
図3. 腰部硬膜外ブロック
(知覚、運動、交感神経ブロック)
図4.顔面神経ブロック(運動神経ブロック)
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