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神経ブロックとは
 神経ブロックといえば、神経に直接針を刺し、局所麻酔薬を注入するというイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

 また、施行する側に立って見た時には技術的に難しそうであるとか、リスクが高そうであるとか、局所麻酔薬を使用していることから、単なる痛み止めに過ぎないのではないかと思ってはいませんか。

 受ける立場としては、針を刺されることの恐怖とブロック時の痛み、さらに付随して起こる合併症などを克服して受けるのが神経ブロックということになります。しかし、神経ブロックを一度でも経験した患者の中には神経ブロックを進んで受ける患者が大勢いることは事実です。

 内服ですませられないのかという感想を持つ人もいますが、神経ブロックは内服薬と異なり、必要な部位のみに選択的に効果を及ぼしうることから、全身への不利な影響がなく、眠気や意識への影響がほとんどありません。もっとも、針を刺さずに神経ブロックと同等の効果を得られれば、それに越したことはありません。しかし、ある病態や疾患によっては今のところ神経ブロックに勝る効果を明確にあげられる治療法が少ないのも現実です。

 それだけに名人芸ではなく、ある程度の訓練を受ければ誰でもより安全により容易に施行できるような神経ブロック法の開発の必要があり、様々な工夫が試みられています。

 そこで、まず神経ブロックの基本について述べます。

 神経と一口にいっても、いろいろな機能を持った神経があり、神経ブロックの対象となる神経は脳神経の一部、脊髄神経(知覚神経、運動神経)、交感神経ですが、それぞれの神経の刺激伝達を遮断することにより、それぞれの異なった効果が出ます。他に下垂体ブロックのように中枢神経が対象となることもあります。

 これらの神経を直接目標として刺入するものだけではなく、神経の近傍に針を進め浸潤させるものや、直接神経を目標にせず、いわゆるコンパートメントブロックとよばれ、神経を含んだ鞘の中に局所麻酔薬を注入して、目的の神経を遮断する方法があります。交感神経節は位置が不定なものが多く、むしろ直接穿刺するのは困難で、多くがコンパートメントブロックです。

 使用する薬剤は、主に局所麻酔薬ですが、アルコールやフェノールなどの神経破壊薬、特殊なブロックとしてA型ボツリヌス毒素製剤、交感神経遮断薬などが使われます。また、顔面神経ブロックのように薬剤を使用せずに穿刺圧迫だけで行うものや、椎間板内加圧注入療法のように減圧が主目的であるものは、局所麻酔薬ではなく、生理食塩水がメインといった場合もあります。

 当初、神経ブロックは解剖学の知識を頼りに、自分の指の感覚で施行されていたものが多く、いわゆる名人芸的要素が高いものでした。近年はX線透視や超音波を利用したり、体位を工夫して、ある程度の訓練を受ければ、より安全により容易に施行できるようになってきています。

 また、厳密には神経ブロックとはいえないかも知れませんが、高周波熱凝固を応用したものや脊髄刺激療法、骨髄減圧術、ファイバースコピーを利用したエピドラスコピー、胸腔鏡下交感神経切除術など、神経ブロックの手技を応用したminimally invasive surgeryとも呼ぶべき療法に発展してきています。
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